フォーカルジストニアという指の病気をきっかけに、2013年頃にフェルデンクライスを始めた私ですが、生徒さんをそのグループレッスンに紹介したきっかけで、面白い話を聞くことができました。
最近、生徒さんやその親御さんに、フェルデンクライスのグループレッスンを紹介しました。
紹介先の講師は佐川樹子さん、主にスイスでコンテンポラリーダンサーとして活躍されていた方で現在は札幌に住んでいます。
遠方でもズームで完全にできるのがフェルデンクライスの素晴らしいところ。
佐川さんは、私が受けたフェルデンクライスのトレーニングの際に英語の同時通訳者としていらしていて、独特な雰囲気と世界観を持ってらっしゃるのが好きでした。
手が出せる料金で、とにかくたくさんの動きを体験でき、かつ質の良い指導者、というのを探していてピッタリハマったのです。
紹介しておきながら、やっている内容をよく知らない、というのではよくないなと感じていたし、他のフェルデンクライス指導者はどのようにレッスンを行っているのか興味もあったので参加してみることにしました。
先日の月曜日、初めてグループレッスンを受けました。
動きはもちろん楽しかったのですが、特に興味深かったのが他の生徒さんとのディスカッションでした。
数名のグループに分かれてその日やった動きについてディスカッション(任意)するのですが、私とグループになったその方は、プロのコンテンポラリーダンサーでした。
後で少し調べてみたところ有名な方で、15歳でフランスのカンヌにバレエ留学し、16歳で国立リヨンコンセルヴァトワールというバレエ学校を首席で卒業、その後はフランス国立のオペラ座に入団、その後スイスのジュネーブ大劇場バレエ団に入団して踊ってらした方でした。
今は日本にいて、フェルデンクライスのトレーニングを受け2年目だそうです。
もちろんバレエやコンテンポラリーダンスを教えたり踊ったりする仕事をされているそうです。
彼女が言っていたのは、ダンスの世界においては動きのメソッドではフェルデンクライスが最も認知度が高いとのこと。(でもスイスでの話なので、日本はまた違う状況なのかもしれません。)
日本の音楽界は体のことには目を向け始めたけど、「アレクサンダーテクニーク」というメソッドにようやく日の目が当たってきたくらいです。
美しい動きを極めるダンスにフェルデンクライスが役立っているのに、音楽にはなぜこれほど広まらないのでしょう。
コンテンポラリーダンスというのは、主にクラシックバレエをやってきた人たちで構成されているのだそうですが、彼女が言っていたのは、クラシックバレエをやっている子供たちはクラシックの動きの癖に染まり、ニュートラルな動きができなくなる、ということでした。ニュートラルとは、自然な動き、という感じです。
なので他の踊りを踊らせても、どうしてもクラシックバレエになってしまい、例えばコンテンポラリーを踊らせようとしてもコンテンポラリーではなくクラシックバレエのコンテンポラリーになってしまうと。
ヒップホップなどでもよく聞く話ですね。
あれほど自由に動けるように見えて、踊りが全てヒップホップになってしまうと。
もちろんダメというわけでは全然ありませんが、もっと極めたいと思った時に立ちはだかるものがあるのですね。
昨年、テレビでローザンヌ国際バレエコンクールを見ていたのですが、1位になった男の子の動きが全然バレエっぽくなかったのが印象的でした。ただ自然で美しい、という感覚でした。
解説をしている男性のバレエダンサーが「この子はバレエではなく踊りを踊っていました」と言っていたのですが、こういう意味かと急に思い出しました。
クラシックバレエしか踊らない、ヒップホップしか踊らないからいいんですという問題ではなく、ある決まった形によって作られたものはどこかで行き詰まるということなのです。
それは痛みだったり、怪我だったり、美しさだったりします。
上のような行き詰まりから解放された根本的な美しさを目指す場合には、赤ちゃんのような動きであることが必要です。
それには、本来の自分の力を取り戻すことが必要です。
そして、フェルデンクライスは忍耐は必要だけど全く苦しくない動きでそれができるようになるのです。
ダンスにフェルデンクライスが生かせる、という内容でしたが、ということは、同時にピアノ演奏にも必ず役立てるということなのだと、そのことに自信をもったディスカッションでした。
フェルデンクライスにご興味ある方は、レッスン中にお声がけいただくか、こちらからお問い合わせください。
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この動画は高校生くらいの時の彼女。
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私が中学生の時に最もハマった曲、ラヴェル作曲の「夜のガスパール」から「オンディーヌ(水の精)」を弾いています。当時聴いていたのはマルタアルゲリッチというピアニストの演奏でした。
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彼女の演奏で当時の記憶が蘇り、中学生の時とは違う面白さにも気づき、睡眠不足になりながらも聴き続ける日々が続きました。