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ピアニストの繊細なタッチをさらに高める手法を発見 ~技能の限界を突破するトレーニング理論の解明へ~

さちピアノ教室講師かなざわです。ピアノ演奏においては、ある1定の水準に達するまでは その人の本来持ち合わせている運動能力や、どの位勤勉に練習できるか、それだけで上達します。しかしそこから先、ピアノ演奏者の運動機能をさらに高める方法というのは 未解明でした。そうした考え方は今まで目には見えないものでしたが、最近の研究で少しずつ明らかになっています。

 

 まずは世界的に活躍する名演奏家と呼ばれる方々の名言をちょこっと紹介します

■(練習方法について)ゆっくり弾きなさい。音程が悪いのに早く弾いたら あなたの音程は悪いままです。「パールマン」

■演奏だけでなく、ほかのことにも目を向けて心や考え方が非常に豊かでなくてはいけません。だからどれだけ練習するかではなく「どう練習するか」が1番大切です。「ギトリス」

 

アスリートや音楽家、外科医、工場や伝統工芸の職人など、さまざまな分野でエキスパートと呼ばれる熟練者の運動技能は、長年にわたる膨大な運動トレーニングを経て獲得されます。

しかし、トレーニングよる技能の向上はやがて頭打ちになります。この「天井効果」は、技能をさらに高めたい熟練者にとって大きな問題です。

 

従来、天井効果を突破するために多くの熟練者はトレーニングの量を増やしていましたが、それは怪我や障害のリスクを高めるだけでなく、天井効果を突破する効果すら得られないという研究報告が相次いでいました。

 

今年、ソニーコンピューターサイエンス研究所よりある研究結果が発表されました。

 

研究グループは以前、体性感覚機能(皮膚や筋肉の受容器から得られる感覚に関連する脳神経機能)がピアニストの熟練した運動技能と関連することを発見しました。

その機能を増強することによりピアニストの運動技能が高まる可能性が示されましたが、その真偽は不明でした。

 

体性感覚機能というのは、ものすごく簡単に言うと「違いを感じる力、識別能力」です。

フェルデンクライスメソッドでも基本となる考え方です。

 

研究グループは、鍵盤の重さの違いを識別する力を洗練させることで、指先の力触覚(指先で感じる能力)が向上し、力を制御する能力が向上することを明らかにしました。

つまり違いを感じる能力がピアノ演奏上達のための大きな鍵であることを発見したのです。

 

この発見は熟練者の技能向上の限界を突破する、新しいトレーニング理論の解明や、熟練者の特異的な脳の柔らかさ(可塑性)の仕組みの解明、過剰な訓練によって手指の機能が低下する脳神経疾患(講師かなざわに現在進行中のジストニア)のリハビリテーション法の開発などに役立つことが期待されます。

 

研究の詳細内容についてはこちらをお読みください↓

ピアニストの繊細なタッチをさらに高める技法を発見

 

研究結果でわかることは、シンプルにいうと「違いを感じる力」が脳を活性化する→狙い通りの動きができたり、洗練されたものになる、ということです。

 

また熟練者の運動技能の限界の突破は、「トレーニングの量を増やす」のではなく「方法を最適化する」ことが重要であることを示しています。ただ練習するのではなく、質の良い練習をするということです。

 

フェルデンクライスメソッドは違いを感じる力を高めるメソッドです。

フェルデンクライスは、ナチスドイツのさなかにユダヤ人だったため、迫害を受ける時代に生きた人でした。

そんな大昔にすでにこのことに気づいていたわけです。

たくさんの人に広めましたが、ご存知のように今でも日本は努力、根性、反復、頑張ることが浸透しており、学校教育もそのままです。

オランダ辺りが世界的にはフェルデンクライスメソッドが浸透しているようです。

 

私が小学6年生のときのピアノの先生の言葉を思い出しました。

ある練習曲を弾くと先生がため息をつきながら

「全然良くない。練習の仕方が悪いんじゃないの?まさか反復練習してるんじゃないわよね。何回も意味のない練習を繰り返すより、すごくうまく「1回だけ」弾いた方が何倍も効果があるわ」

 

とおっしゃいました。

まさに反復練習だった私は、

「え?どういう意味?1回でいいの?」

と思いました。

 

私がその当時通っていたのは桐朋学園付属の音楽教室でした。

当時(今は状況が変わっている)そこの先生になれるということは、小さい頃から自分で練習方法を考えられる天才だったことの証です。

一昔前は、練習方法を自ら考え出せる天才しか、生き残ることができなかったからです。(もともと上手い人だけが生き残る世界だった。)

そういう天才と呼ばれる人たちは、体験的に「質の良い練習」について知っていたのだと思います。

 

その「1回だけでいい」という先生の言葉は、ずっと頭に残り続けました。

大学を卒業する時期になってもわからず、その意味が少しわかったのは、社会保険労務士資格を取ったときでした。26歳の時です。

質の良い勉強方法というものがようやくわかり、「1回だけとはこういう意味だったのか」と思いました。

 

本質的にわかってきたのは、フェルデンクライスのトレーニングを始めてからでした。小さい頃に疑問に思ったことが、こうして繋がる体験はすごく面白かったです。

 

上の研究グループの古屋先生(脳科学者)に私の左手の病気(ジストニア)の関係で実験でお会いしたことが何度かあります。

古屋先生は私と学年が一緒で、同じコンクールも高校時代に受けていたことがあるプロ並みのアマチュアピアニストです。

私の自閉症の息子のことを話したことで、古屋先生のお嬢さんの話になりました。

そこで先生が仰っていたのは教育について「今から頑張らせすぎてはいけない」ということでした。

頑張る必要があるのは 社会人になってからで、それまでに頑張ってしまったら疲れてしまってそれ以上頑張れなくなるでしょうと、すごくシンプルにおっしゃっていました。

私はそれを体験的に知っていたのでやはりそうなんだなと思いました

 

話を少し戻します。

違いを感じること、それはフェルデンクライスを始めとしていろいろな方法で洗練させることができます。

シュタイナーなどの超自然的な教育法は、全て違いを感じる能力を育てる内容で満たされています。

 

違いを感じる力を育てる一方で、違いを感じる力を封じ込めてしまわないような教育というのも同時に非常に重要です。

 

頑張ったり無理をしたり、すでに疲れているのに何かに取り組ませてしまう、自分でもしてしまう、ということが私達にはよくあります。

しかし「違いを感じる能力」は、頑張ったり努力して「いない」ところで起こります。

頑張ったり努力したり 疲れているのに何かやっているという時には すでに神経系統は活性化しなくなり、学びをやめてしまっているからです。

 

さらに、頑張ることに慣れてしまうと違いを感じられなくなります。

それが実は一番怖いです。

自分のやりたいことがわからなくなり、社会の評価によってでしか自分の価値を見出せなくなったり、行きたいところはそこではないのに時代の一般常識にとらわれて、評価の高い場所に行こうと考えたりしてしまう、自分の考えで生きられない人になります。(偏差値とか受験とか最たるものですよね。。。)

 

何を学ぶ上でも「違いを感じること」これが重要です。

そしてこれは何歳でも始められます。

いつからでも人は変わることができます。


今年最後のおすすめ動画

※エラーメッセージみたいなものが出てきたら、「YouTubeでみる」で開いてみると視聴できると思います。

 

女性ピアニストで好きと思える人はかなり少ない(体の使い方で無理をしている人が多くて観ていられなくなるから)なのですが、私の好きな女性ピアニストのうちの一人、アルゲリッチです。

これを演奏しているときは、78歳くらい。

現在は80歳を過ぎていますが余裕で超絶技巧の曲をコンサートでやっています。

世界で最もチケットが手に入らないと言われているピアニストです。

体の使い方がうますぎて、本当に尊敬します。

そして究極に省エネで弾いているからこそ、このような年齢になっても弾けるのです。

長い曲ですが、特に32分以降くらいが楽しめると思いますのでぜひご視聴ください。


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以下、2021年1月の状況です。

 

『子供のレッスン』『発達障がいその他の障がいのお子さまのレッスン』:今年度の募集を終了しました。空きが出ましたらお知らせいたします。

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