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ピアノ指導や練習にミラーニューロン『物まね細胞』を利用する。

人間は脳にある、特殊な細胞の集まりのおかげで、他人をきわめて微妙なところまで理解することができます。その細胞群を総称して、『ミラーニューロン』と言います。

ミラーニューロン「物まね細胞」を知ると、練習の仕方、指導の仕方が見えてきます。

 

3ヶ月に一度、定期的に通っている小さな病院がありますが、半年ほど前に行ったとき、新人の受付の方がいらっしゃいました。ちょっと自信がなさそうでしたが、優しそうで一生懸命な感じだったので、よかったなあと思いました。

というのも、もともといる受付の方がとても嫌な感じで、この病院行くのやめようかなと思っていたくらいだったからです。

 

新人の方が来て、受付が変わるかなと期待していたのですが、その半年後にその新人さんを見たとき、愕然としました。

なんと元からいる受付の女性と『うりふたつ』の対応の仕方になっていたからです。

 

意地悪な感じの口調、ちょっと困ったときに見せる仕草、電話の取り方など、本当にそのままなのです。

「これこそミラーニューロン・・・(T_T)」

と思いました。

 

ミラーニューロンの大きな性質は、人の動きを見ているときに、自分がさもその動きをしているかのように、無意識にそこを動かす脳を使っているということです。

人が走っているのをみれば、走ることに必要な脳の部位が同じように働きだし、笑っている人を見れば、実際にその動きをしていなくても、笑うために必要な神経細胞が働き始めます。

 

ミラーニューロンは、動きを真似します。

ですから、言うことではなく、動きを真似します。ということは、大人がいくらこうしてほしいと子供に言っても、それを実際に大人がしていなければ、それはやりません。

 

真似してほしくないようなことでも、大人がやっていれば真似します。

子供は大人の動きを見て真似しています。

ギクリとしますよね^^;

 

これをピアノの指導や練習に応用したいとするなら、こういう生かし方が良いでしょう。

  • 一流の音楽家による演奏を聴く。(バイオリン、オーケストラ、歌、ミュージカルなんでも良いです。)
  • 一流の芸術家による、クラシックバレエ、お芝居等を観る。
  • 音楽や芸術でなくても良いので、動きを伴う仕事をしている人で超一流と言われるような人の動きを見る。

※生で観ることが一番良いですが、難しい場合には動画でも大丈夫です。

 

外国に留学して音楽を学んで帰ってきた人で、特に自分の楽器の演奏をがんばったわけではないのに、一つ上を行く演奏をする人に出会うことがあります。

これは、留学先には毎日のように超一流のオーケストラを聴ける環境があったり、そこらじゅうで、それほど高くない料金ですばらしい芸術的なパフォーマンスを見る機会があったりと、無意識の内にミラーニューロンが活性化して、さも自分自身がその動きを行ったかのような脳の働きが起き、結果として自分の演奏に反映されるからということも、上達の1つの要因だと思います。

 

こういうことは、ミラーニューロンという概念がない頃からみんな気づいていて、私もピアノの先生から、

「いろんな良い演奏を聴きに行きなさい。たくさんコンサートに行きなさい。」

と言われていました。

私はアホだったので、『演奏を上達させたいなら練習したほうが早いんじゃないか?』と思っており、真面目に聞いていませんでしたが、今ならわかります(T_T)

 

ピアノはいろんな音が出せる楽器です。

オーボエ、バイオリン、チェロ、トランペット・・・様々な音色を出すことができます。

 

その楽器を聴き、観る機会がたくさんあれば、それをやっていなくても脳の中では実際演奏したかのように神経細胞が働き、それをピアノに生かすことができる、それがミラーニューロンの働きです。

 

ピアノの練習に身が入らない時、ちょっと疲れたときは、ぜひ動画を見てみましょう。

ピアノ演奏に生かすということでは、私はオーケストラ演奏がおすすめです。

 

ミラーニューロンが持つ性質でもう1つ興味深かったのは次のことです。

  • 他人の意図を察知するミラーニューロン。

子供にミラーニューロンについて『動きを真似させる』という名目である実験を行いました。

 

それは、椅子に座り、机の上に手を出して『左手』で『右前方』にある【点】を触るのを真似るという実験でした。

この実験の結果、左手で動きを行った子供は1人もおらず、全ての子どもが『右手』でその点を触りました。

物まねが得意な子供のはずなのになぜ間違えるのでしょうか?

 

子供は、自分の真ん中を横切る動きをすることが発達の特性上苦手です。だからそのような結果になったのかという仮説が生じたため、その要素が入っていたかどうかを識別するために、少し違った実験もしました。

 

右前方にある【点】をなくし、単純に左手で右前方の、今まで点があったあたりを触る動きを真似させたのです。

その結果、誰1人間違えずに、『左手』でその動きを真似ることができました。

 

つまり子供は、右前方にある点に触ることを目的だと察知したときは、近道である右手でその目的を触ってしまったが、目的がない【点がない】場合には、正しい動き(左手で触る)をすることができた。という実験結果となりました。

 

この実験結果からわかることは、動きからその意図を見つける力は非常に強く(ミラーニューロンの働きだそう)、ひとたびその目的を見つけてしまうと、そのプロセス(今回の実験では左手が動く)を見失い、近道(目的に近い右手を動かす)しか使わなくなってしまうということです。

 

生徒さんがよく知っている曲を弾こうとするとき、どうしても指番号が入っていかない、または無視しているように見えるケースがあります。親御さんも見ていてハテナ?と思うことがあるでしょう。

 

これは、ある曲を弾くために必要なのはまず音とリズムであり、そこが目的地であると認識すると、その達成のために必要な指番号が見えなくなってしまうことから起こっていることが多いです。

 

これと反対のことが起こるときもあります。

指番号が目的だと認識すると、音間違いやリズムが違っていても気づきません。

難しいですね・・・。

 

こういったことで生徒さんが混乱しているのを見つけた時には、次のようなことができます。

指番号が入っていかないなら、目的を指番号にする楽譜を作る。

例えば、ドレミ ドレミ を123で弾かせたいなら、

紙にただ123 123と書くと、そのとおりに弾いてくれます。

 

リズムに目を向けてほしいならリズムだけの楽譜を作る、音間違いを直したいなら、音だけの楽譜を作ればいいのです。

 

この方法はかなり効果的です。

ご自身で練習するときも良いと思います。

ぜひお試しください。

 

子供でも大人でもミラーニューロンは使いますが、子供においてのミラーニューロンの使われ方は非常に重要です。周りの大人をよく見ていて、真似をします。

 

子供に習い事をさせるときは、その先生と似てもいいかなと思える方を選びましょう。

先生が特定できない習い事はおすすめしません。

どの先生にあたるかわからないような、例えば体験レッスンの先生と実際に習う先生が違うような大手のピアノ教室、塾、スポーツ教室等。

 

ただ、それができるようになればいいのではなく、そこにいる先生を見て選ぶようにするとお子さんの健やかな育ちにつながります。

私自身も習い事を子供にさせるときは、先生の顔が見えて信頼がおける、個人の教室を選んでいます。


おすすめ動画

オーケストラを聴くのをおすすめしたので、いろいろ聴いていたところ、大好きな五嶋みどりさんの演奏を見つけました。チャイコフスキー作曲のバイオリン協奏曲。

小学生の頃から毎日のようにCDを聴いていた、大好きなバイオリニストです。


さちの本棚

ブログ記事の参考文献です。

「生物学におけるDNAの発見に匹敵する」と称されるミラーニューロンは、他者の行動を見たときにも自分が行動しているかのような反応を示す脳神経細胞です。

この細胞はヒトにおいて、他者が感じることへの共感能力や自己意識形成といった、じつに重要な側面を制御しているといいます。

ミラーニューロン研究の第一人者自らが、驚くべき脳撮像実験などの詳細を紹介しつつ、その意義を解説します。

【ミラーニューロンの発見】はこちら


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指導にあたって

当時、講師かなざわの1歳の息子がピアノで楽しそうに遊ぶ姿に感激しました。これは、その当時のかなざわにとってピアノは『楽しい』ものではなくなっていたからです。

 

人は本来、ピアノが楽しくないとか苦手だとは思いません。しかし、ピアノが苦手で楽しくないと感じ、結局は諦めてしまう人は多いのが現実です。それを変えたいという思いが、ピアノ教室を立ち上げる原点となりました。

 

お子様にピアノを習わせたい親御さんや、自分自身がピアノを学びたいと思っている大人の方々は、レッスンに何を期待されていますか?

私がピアノを習っていた当時は「上手い」ことが全てでした。

それは音大に入っても変わりませんでした。

 

しかし社会に出て「上手い」人に価値があるというわけではない、ということがわかりました。

それはとてもショッキングなことでした。

そこにたどり着けば上手くいくものだと思って努力していたからです。

これは勉強,就職に対する考え方と同じだと思います。

 

『上手い』演奏は目指しません。

ピアノレッスンそして練習というプロセスを通して『質の良い学び方』を学びます。

「結果」は、『学んだ』後に勝手についてきます。

練習、学びの質が良ければ自然と「上手い」演奏になるかもしれません。

 

 私が準備できるのは、まずは何度でも間違えられる、どのような弾き方でも批判を受けない、つまり「安全だ」と感じる環境を作り生徒さんが本来の力を出せるようお手伝いをすることです。

音楽は非常に歴史が深く人間の叡智が宿っています。

それを演奏する楽しさというのは格別です。

しかし、やり方を誤ると体を傷つけます。

 

私自身が、小学校高学年の頃から体の痛みに苦しめられることになりました。

30代を過ぎてからは治療法の確立されていないフォーカルジストニアという脳神経の難病を発症しています。

痛みや病気の発生はその取り組み方にありました。

 

努力や根性、厳しい訓練がもたらす弊害を、ジストニアをきっかけに始めたメソッド「フェルデンクライス」から学びました。

フェルデンクライスは脳の可塑性を利用した科学的なメソッドです。

動きを通して脳を活性化します。

 

根性論でなく、何か有名な教育書に書かれているからでもなく、ただ脳がどのようにしたら活性化するのか、よりよく学べるのか、それをフェルデンクライスは体験をもとに気づかせてくれます。

 

私の指導の源はそこにあります。

指導とは、その演奏を成しとげるための『新しい選択肢』を提示するものです。

『理想』はおしつけません。

一人ひとりに寄り添い、 その人らしい演奏を尊重します。

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従来の精神論に頼らない科学的な根拠に基づいた指導法をもっと広げ、本質的な意味で生徒さんの人生の質をあげることに貢献していきたいと考えています。

 

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