どうしたら覚えるでしょうか。理解できるでしょうか。
ピアノ演奏というツールを通して、どうしたら楽に覚えられるのか、どのように教えれば理解しやすいのか、なんとなく感じていたことが、確信に変わってきたことがあります。
また、それは科学的に証明されてきていることでもあることがわかりました。
『感覚』がキーワードです。
今回は、覚えたり理解したりすることと『感覚』の関係について、書いてみたいと思います。
ピアノ演奏で、あるリズムや速度を身につけるのがどうしても苦手な生徒さんがいた場合、理解してもらうにはどうしたらいいでしょうか。
メトロノームをかけたり、こんな速さだよと言って、弾いてみせたりして、反復練習したりするのが一般的であると思います。ですが、それをやり続けても、リズムや速さが入っていかない生徒さんは、たくさんいます。
そんなときは、ピアノから離れてもらうことがあります。
まず、単純に速さを覚えてほしいときは、その速さで走ったり歩いたり、ケンパでその速さをやったり、いろんな楽器でその速さを試してみたりしてもらいます。
お手玉も使ったりします。
そのとき「からだ」は、いろんな『感覚』を受け取ります。
『固有受容覚』(筋肉を使う時や関節の曲げ伸ばしによって生じる感覚)、足裏で地面を踏む、指先で楽器を触るときの『触覚』、『前庭覚』(重力やスピードの感覚)、楽器の音を聴くことでの『聴覚』などなど・・・。
同じ速さ、リズムを覚えてもらうのでも、動き方を少し変えたり、別の楽器を使うだけで、全く新しい神経システムを使うことになります。
紙面の都合であまり細かいことは書けませんが、やろうと思えば、曲の速さについて、1週間毎日、別のプログラムを作ることもできます。
同じ動きでも、イメージを変えたり、視点を変えたりするだけで全く違う神経システムが働き出し、そうすることで理解が深まり、体の深部でそれを覚えることができるのです。
生徒さんが上記に取り組んでくれるかどうか、そこが問題ですが、感覚に働きかける練習方法はたいてい面白いと感じるものなので、やってくれる生徒さんは多いです。
逆に、ピアノを弾く指先でできていたと見えていたリズムや速さも、違う感覚を伴ってからだの別の部位で試したときにできなくなるというのは、まだ完全には理解していない、覚えていないということだとも言えます。
そういう弾き方は、耳のいい人にはすぐにばれます・・・
もう一つ、すんなりいかないのは、『8分音符』の捉え方です。
8分音符というのは、一つを2つに分けた音符と捉えてください。
まず、『半分』が理解できていない生徒さんは、かなりいます。
その概念を理解するにはまだ早い年頃の子供は別として、学校でも習うし、計算でも出てくるので、そろそろ覚えたほうがいいかなというお子さんの場合に、少し力を入れて教えることがあります。
多いのが、
『4分音符(一つ)を2つにわけます。するとこの2つにわけた8分音符は数字で表すと何でしょう。』
という問いに対し、『2』あるいは『4』と答える生徒さんが多いです。
もちろん答えは『0.5』、あるいは『2分の1』ですね。
8分音符という名前の影響で、『8』と言って疑わない生徒さんもときどきいます。小学校3,4年生でもざらなのです。大混乱状態です。
もちろん、『0.5』、あるいは『2分の1』も学校ですでに習っているのですが・・・。
習ったときに完全に理解できていないのです!
まずレッスンで教える場合には、半分という概念を理解させることから始まりますが、ただ絵で説明するだけでは足りませんでした。
私が試したのは、まずは、いろんなものを半分にすることでした。
いろんな素材の紙を切る、いろんな種類のお菓子を半分にする、コップにある水を半分にする、ピアノや声で、長さを半分にするなど。(他にも多数。)
シュタイナー教育では、半分の概念を理解させるために、大きな丸太の棒を切らせることもあるらしいです。
これをやると、今まで何をしても理解が難しかったお子さんでも、完全にからだに入った子供が多かったとか。
丸太を切るときには、切る音『聴覚』、丸太の香り『嗅覚』、筋肉や関節の感覚『固有受容覚』、丸太や木を切る道具の手触り『触覚』など、本当に感覚を総動員させることになるから、入るんですね。
そこで、本当の意味で『半分』という概念がからだに入った生徒さんに、8分音符を教えるとびっくりするくらい、さらっと入っていくことが多いです。
(もちろん、さらにそこから先の説明をして初めて理解する生徒さんもいます。)
机でただ勉強するのでは、理解していなかったり、体の深部で覚えていないため、すぐに忘れたり、応用できなかったりすることが多いです。あと、そもそも覚えにくいです。
私は学生の時、家庭教師や塾のアルバイトで、小学生や中学生に教えていた経験があります。
その時も、感覚を使うと理解しやすいようだということは感じていましたが、こういうことだったんだなと、今では思います。
ピアノ演奏を指導するという、人間には本来プログラムされていない難しい動きをしてもらわないといけない職業のため、いかにしたら楽に覚えられるか、理解できるか、ということにはとことんこだわって学んでいます。
この学びの基本には、いつもフェルデンクライス、感覚統合等の考え方が関わっています。
ピアノに限らず、勉強や他のことに関しても、覚えさせる、理解させるのに『感覚』が重要であることは言うまでもありません。
もしどうしてもお困りのようでしたらお声がけください。
お役に立てるかもしれません。
さちの本棚
HSCかどうかを知るためのチェックリスト
- すぐにびっくりする
- いつもと違う臭いにきづく
- 興奮したあとはなかなか寝付けない
- たくさんのことを質問する
- 服がぬれたり、砂がついたりすると、着替えたがる
- うるさい場所を嫌がる などなど
くわしくは本文をお読みください。
息子も私もHSC(生まれつき敏感な感覚、感受性をもった人たち)だと思います。
子供の頃、親から『神経質すぎる、もっと堂々としなさい』とか、『細かいことを気にしてめんどくさいわね』というようなことをよく言われていました。
会社員時代は、大勢の人がいる会社に入っていくことにストレスを感じて、誰よりも早く会社に行き、誰もいない社内に出社していました。
そういう自分のことが嫌いだったのですが、「繊細で気遣いができ、他者への共感力が高い」と、ポジティブな面として捉えることもできると、この本を読んで感じました。
実際、私の共感力の高さで、レッスンがうまくいっているところは多いと思います。
お子さんに対して気づいてあげてほしいと思う気持ちもありますが、生きていくのがどうもしんどいご自身の理解にもつながる本かもしれません。