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手を丸く、は時代遅れであること

ピアノの先生が教えるテクニックというのは、自身の経験によるもの、つまり教えられてきたからそのように教える、というものがほとんどです。
先日、ピアノの先生が集まるミーティングに出席して指導法について話し合ったのですが、そこでいまだに「手を丸く弾かせる」ことをさせている先生がいらしてとてもびっくりしました。

手を丸くして弾いているように見えるのは、確かにそれが機能的であるからです。
しかし、それは体全体をうまく連携させて使った結果としての丸い形です。
その形を「やろう」とするならば、そこには無駄な緊張が生まれます。

緊張には筋肉の収縮を必ず伴います。
筋肉は柔らかく長くなっているところから、収縮して動きを生み出すもの。
つまり、まずは柔らかくなっている必要があります。
柔らかくしていてほしい筋肉を、「手を丸く」という一言によって常に収縮させてしまうことになると、当然、手はうまく動かせなくなります。

50年前の日本ならともかく。。。
フェルデンクライスやアレクサンダーテクニークなど体の使い方が、当たり前のように音大の科目として設置してある欧米諸国から見れば、バカにされてしまうでしょう。
指が丸くならない子供は、それが最善の方法だからそれをやっているのであって、そこからさらに「これにしろ」と言葉をかけられたならば、さらに動きの質は悪くなるでしょう。
まさか先生の一言により、自ら限界を作ってしまっているとは子供は知るよしもありません。

私もこうして育てられた世代です。
私はフェルデンクライスを始めて、この弊害がどれだけ恐ろしいかを知りました。

以下は特にピアノを弾く人に試してほしいこと。
ピアノを弾かない人ももちろんやってみてください。

仰向けに寝ます。
腕は楽に横に置きましょう。
手のひらは天井を向いていますか?
それとも自分の体の方、それとも床の方?

手のひらを床に向けましょう。
自分の指がどのようにあるか感じてみてください。
おそらく丸まっていると思います。
それをほんの少しだけ、力を使わずに広げようとしてください。

力を使わずに広げるのが難しい人が多いでしょう。
もちろん力を使えば広がるとは思います。

広げるのが難しいのは手を丸くする筋肉の癖がついているからです。
無用な緊張がなければ、指はもう少し長く伸びているはずなのです。

ピアノは指を大きく広げて弾くことがたくさんある楽器です。
広げる動作が難しいというのは大変な苦労をすることになります。四六時中、余計な筋肉を使い続けることになるからです。

ピアノをやってこなかった人でも、広げにくいと感じる人は多いと思います。
それは物を扱うことがすでに手を丸くすることにつながっていて、丸くするのが習慣になっているためです。

導入過程の子供の弾き方はとても興味深く尊敬の念を覚えます。
どのように弾けばうまく鍵盤に力が伝わるか、いろんな角度から押したり、指を伸ばしてみたり曲げてみたり、工夫し始めるのです。

大人になりテクニックというものを再学習するときにはこうした子供時代にやっていた作業が必要になります。
子供は、ごく自然な形でそれを習得しようと学んでいるのです。
それを「こうよ!」と形作らせてしまうことがどんなに恐ろしいことか、ピアノの先生はよく考える必要があります。

フェルデンクライスの動きの後には指が真っ直ぐになったような感覚や手が柔らかい感覚が生まれます。
無駄な筋肉の収縮がなくなり、本来の自分に戻るからです。
ピアノもとても弾きやすくなることに気づくことになります。

でもでも!
その前に
「手を丸くする」
という呪いの言葉をかけられなかったら、ピアノ奏者の私たちはもっと自由だったでしょう。

指導者というものは、常に自分の知識をブラッシュアップしていく必要性があります。
私は毎日、フェルデンクライスを行い、脳科学や体について研究し続けています。

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コメント: 1
  • #1

    通りすがり (水曜日, 27 12月 2023 20:47)

    小学生の時分、まさにこの「手を丸めなさい!」
    との指導をどこのピアノ教室でも毎回受け続けたため、
    弾ける曲が増える喜びよりも
    いつしかレッスンを受ける苦痛が勝ってしまい
    程なくして辞めてしまった者です

    何十年も前の遠い昔の事ではありますが
    あの当時にこだわらない先生に出会えていたらと思うと
    どうしても寂しい気持ちが沸いてきます
    これからピアノを習う子供達が
    あの頃の自分と同じ気持ちにならないよう
    切に願うばかりです

指導にあたって

当時、講師かなざわの1歳の息子がピアノで楽しそうに遊ぶ姿に感激しました。これは、その当時のかなざわにとってピアノは『楽しい』ものではなくなっていたからです。

 

人は本来、ピアノが楽しくないとか苦手だとは思いません。しかし、ピアノが苦手で楽しくないと感じ、結局は諦めてしまう人は多いのが現実です。それを変えたいという思いが、ピアノ教室を立ち上げる原点となりました。

 

お子様にピアノを習わせたい親御さんや、自分自身がピアノを学びたいと思っている大人の方々は、レッスンに何を期待されていますか?

私がピアノを習っていた当時は「上手い」ことが全てでした。

それは音大に入っても変わりませんでした。

 

しかし社会に出て「上手い」人に価値があるというわけではない、ということがわかりました。

それはとてもショッキングなことでした。

そこにたどり着けば上手くいくものだと思って努力していたからです。

これは勉強,就職に対する考え方と同じだと思います。

 

『上手い』演奏は目指しません。

ピアノレッスンそして練習というプロセスを通して『質の良い学び方』を学びます。

「結果」は、『学んだ』後に勝手についてきます。

練習、学びの質が良ければ自然と「上手い」演奏になるかもしれません。

 

 私が準備できるのは、まずは何度でも間違えられる、どのような弾き方でも批判を受けない、つまり「安全だ」と感じる環境を作り生徒さんが本来の力を出せるようお手伝いをすることです。

音楽は非常に歴史が深く人間の叡智が宿っています。

それを演奏する楽しさというのは格別です。

しかし、やり方を誤ると体を傷つけます。

 

私自身が、小学校高学年の頃から体の痛みに苦しめられることになりました。

30代を過ぎてからは治療法の確立されていないフォーカルジストニアという脳神経の難病を発症しています。

痛みや病気の発生はその取り組み方にありました。

 

努力や根性、厳しい訓練がもたらす弊害を、ジストニアをきっかけに始めたメソッド「フェルデンクライス」から学びました。

フェルデンクライスは脳の可塑性を利用した科学的なメソッドです。

動きを通して脳を活性化します。

 

根性論でなく、何か有名な教育書に書かれているからでもなく、ただ脳がどのようにしたら活性化するのか、よりよく学べるのか、それをフェルデンクライスは体験をもとに気づかせてくれます。

 

私の指導の源はそこにあります。

指導とは、その演奏を成しとげるための『新しい選択肢』を提示するものです。

『理想』はおしつけません。

一人ひとりに寄り添い、 その人らしい演奏を尊重します。

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