手を丸くして弾いているように見えるのは、確かにそれが機能的であるからです。
しかし、それは体全体をうまく連携させて使った結果としての丸い形です。
その形を「やろう」とするならば、そこには無駄な緊張が生まれます。
緊張には筋肉の収縮を必ず伴います。
筋肉は柔らかく長くなっているところから、収縮して動きを生み出すもの。
つまり、まずは柔らかくなっている必要があります。
柔らかくしていてほしい筋肉を、「手を丸く」という一言によって常に収縮させてしまうことになると、当然、手はうまく動かせなくなります。
フェルデンクライスやアレクサンダーテクニークなど体の使い方が、当たり前のように音大の科目として設置してある欧米諸国から見れば、バカにされてしまうでしょう。
私もこうして育てられた世代です。
私はフェルデンクライスを始めて、この弊害がどれだけ恐ろしいかを知りました。
以下は特にピアノを弾く人に試してほしいこと。
ピアノを弾かない人ももちろんやってみてください。
仰向けに寝ます。
腕は楽に横に置きましょう。
手のひらは天井を向いていますか?
それとも自分の体の方、それとも床の方?
手のひらを床に向けましょう。
自分の指がどのようにあるか感じてみてください。
おそらく丸まっていると思います。
それをほんの少しだけ、力を使わずに広げようとしてください。
力を使わずに広げるのが難しい人が多いでしょう。
もちろん力を使えば広がるとは思います。
広げるのが難しいのは手を丸くする筋肉の癖がついているからです。
無用な緊張がなければ、指はもう少し長く伸びているはずなのです。
ピアノは指を大きく広げて弾くことがたくさんある楽器です。
広げる動作が難しいというのは大変な苦労をすることになります。四六時中、余計な筋肉を使い続けることになるからです。
それは物を扱うことがすでに手を丸くすることにつながっていて、丸くするのが習慣になっているためです。
導入過程の子供の弾き方はとても興味深く尊敬の念を覚えます。
どのように弾けばうまく鍵盤に力が伝わるか、いろんな角度から押したり、指を伸ばしてみたり曲げてみたり、工夫し始めるのです。
大人になりテクニックというものを再学習するときにはこうした子供時代にやっていた作業が必要になります。
子供は、ごく自然な形でそれを習得しようと学んでいるのです。
それを「こうよ!」と形作らせてしまうことがどんなに恐ろしいことか、ピアノの先生はよく考える必要があります。
フェルデンクライスの動きの後には指が真っ直ぐになったような感覚や手が柔らかい感覚が生まれます。
無駄な筋肉の収縮がなくなり、本来の自分に戻るからです。
ピアノもとても弾きやすくなることに気づくことになります。
でもでも!
その前に
「手を丸くする」
という呪いの言葉をかけられなかったら、ピアノ奏者の私たちはもっと自由だったでしょう。
指導者というものは、常に自分の知識をブラッシュアップしていく必要性があります。
私は毎日、フェルデンクライスを行い、脳科学や体について研究し続けています。
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通りすがり (水曜日, 27 12月 2023 20:47)
小学生の時分、まさにこの「手を丸めなさい!」
との指導をどこのピアノ教室でも毎回受け続けたため、
弾ける曲が増える喜びよりも
いつしかレッスンを受ける苦痛が勝ってしまい
程なくして辞めてしまった者です
何十年も前の遠い昔の事ではありますが
あの当時にこだわらない先生に出会えていたらと思うと
どうしても寂しい気持ちが沸いてきます
これからピアノを習う子供達が
あの頃の自分と同じ気持ちにならないよう
切に願うばかりです
高齢者 (木曜日, 25 7月 2024 03:29)
私は間もなく70歳を迎えます。ピアノを始めて2年になります。先生は常に指を丸めて、親指と人差し指の間に玉子が入るイメージをするように指導します。そのイメージでレッスンしますが、いまだに丸くなりません。その他にも、間違えたときは、不機嫌な表情でどこ弾いてるのとか、音の強弱も極端に激しく再現してきます。先生は指導歴50年以上のベテランで、何か質問しても、音楽を知らないものが、余計な事を聞くな、しゃべるんじゃないと毎回厳しく注意されます。レッスンが楽しければ習得できそうなのに残念です。昨日は貴方のような生徒は、うちの教室には2度と来ないで下さいと破門されました。趣旨からそれたコメントになりました。