ピアノに「慣れる」ということ

フェルデンクライスの授業で、再発見したことがあります。

授業では、相手の体を触って楽にする、施術のようなものも学ぶのですが、体を触るときの圧力の加減がものすごく難しいです。強く触れば、痛いと言われ、弱く触ればそれでは効いていないと言われる(涙)大変悩んでいます。

 

ピアノ初心者の子供や大人の方が弾く時に、どうしても弾き方がぎこちないものになったり、大きい音が出したいのに乱暴な音になってしまったり、小さい音で弾こうとすると、音が出ない、なんてことがよくあります。

最近まで、これは正しい体の使い方を学べばできるようになるはず!と思っていたのですが、またこれとは違う問題があることに気づきました。

 

「対象物(相手)をどれだけ知っているか、慣れているか」 これがカギだったのです。

 

ピアノで言えば、どれくらい大きい音が出る楽器で、どれくらい手荒に扱うと壊れることがあって、どういう仕組みで音が出るのか、圧力をどこまで弱めると音が出なくなるのか等を「感覚として」知っているということです。

私の施術から見れば、どこにどういう骨があって、筋肉があって、どれくらいの強さの圧力をかけたら痛がらないのか、効き目のある圧力とはどんなものか、相手が気持ちの良い圧力とはどんなものか「感覚として」知っているということです。

これを知る方法は、ピアノで言えば、叩き壊すくらい大きい音でじゃんじゃん弾いてみる、足で弾くなんてのもいいかもしれません。(私は子供の頃こっそりやってました)

ピアノの蓋を開けて、仕組みを確認しながら弾くことも、一つの良い方法です。

 

考えてみてください。これらは、どれも子供ならやりそうなことだと思いませんか?

つまり、子供はそうやって対象物のことを知り、無意識のうちに、それとの接し方を学んでいるんです。

こういうプロセスを飛び越してしまってピアノを弾こうとすると、触り方がいつまで経ってもわからない、ぎこちなくて、楽に音が出せないようになってしまいます。

 

ピアノは、水には弱いのですが、それさえ避ければめったに壊れません。子供が無尽蔵にピアノを鳴らしていたり、足で弾いていたり、いつまでも練習しないでピアノの中身を眺めていたりしても、あ、ピアノとの接し方を学んでるんだなと思ってください。赤ちゃんが、積み木を積んだと思ったら、壊す、積んだら壊す、というのを繰り返すのを見たことがある方は多いと思います。赤ちゃんはそうやって積み木の素材を知り、どうすると壊れるか、危険か危険でないか、などを学んでいます。そして積み木のことをよーく知った頃にやっと、一般的な積み木遊びをするようになります。

このプロセスを、叱られるなどで飛び越してしまった子供は、積み木の扱い方がわからない、壊すのが怖い、遊べないなど、萎縮する傾向に育つことが知られています。

 

私の「施術」という点においては、とにかく人の体に慣れることだと思います。

電子ピアノが本物のピアノにかなわない理由はこんなところにもあります。仕組みが違いすぎます。施術で言えば、人の体ではなく、人形の体で練習しているようなもので、確かに学ぶことはできるけど、本物の人間にはかなわないですね。

今、電子ピアノをお持ちの方は、将来的には本物のピアノに買い換えることをお勧めします。

 

この一件で、生徒さんに対して、最初からいい音を出させようとしたり、体を楽に使ってほしいと強く願う傾向が、自分にあることを再発見しました。もちろんほっておいたらピアノは上達しませんので、「ピアノを知る、慣れるために必要なプロセス」を念頭に置きながらも、適切なタイミングで次のステップへ進ませることができるように、学びを続けていきたいと思っています。

指導にあたって

当時、講師かなざわの1歳の息子がピアノで楽しそうに遊ぶ姿に感激しました。これは、その当時のかなざわにとってピアノは『楽しい』ものではなくなっていたからです。

 

人は本来、ピアノが楽しくないとか苦手だとは思いません。しかし、ピアノが苦手で楽しくないと感じ、結局は諦めてしまう人は多いのが現実です。それを変えたいという思いが、ピアノ教室を立ち上げる原点となりました。

 

お子様にピアノを習わせたい親御さんや、自分自身がピアノを学びたいと思っている大人の方々は、レッスンに何を期待されていますか?

私がピアノを習っていた当時は「上手い」ことが全てでした。

それは音大に入っても変わりませんでした。

 

しかし社会に出て「上手い」人に価値があるというわけではない、ということがわかりました。

それはとてもショッキングなことでした。

そこにたどり着けば上手くいくものだと思って努力していたからです。

これは勉強,就職に対する考え方と同じだと思います。

 

『上手い』演奏は目指しません。

ピアノレッスンそして練習というプロセスを通して『質の良い学び方』を学びます。

「結果」は、『学んだ』後に勝手についてきます。

練習、学びの質が良ければ自然と「上手い」演奏になるかもしれません。

 

 私が準備できるのは、まずは何度でも間違えられる、どのような弾き方でも批判を受けない、つまり「安全だ」と感じる環境を作り生徒さんが本来の力を出せるようお手伝いをすることです。

音楽は非常に歴史が深く人間の叡智が宿っています。

それを演奏する楽しさというのは格別です。

しかし、やり方を誤ると体を傷つけます。

 

私自身が、小学校高学年の頃から体の痛みに苦しめられることになりました。

30代を過ぎてからは治療法の確立されていないフォーカルジストニアという脳神経の難病を発症しています。

痛みや病気の発生はその取り組み方にありました。

 

努力や根性、厳しい訓練がもたらす弊害を、ジストニアをきっかけに始めたメソッド「フェルデンクライス」から学びました。

フェルデンクライスは脳の可塑性を利用した科学的なメソッドです。

動きを通して脳を活性化します。

 

根性論でなく、何か有名な教育書に書かれているからでもなく、ただ脳がどのようにしたら活性化するのか、よりよく学べるのか、それをフェルデンクライスは体験をもとに気づかせてくれます。

 

私の指導の源はそこにあります。

指導とは、その演奏を成しとげるための『新しい選択肢』を提示するものです。

『理想』はおしつけません。

一人ひとりに寄り添い、 その人らしい演奏を尊重します。

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年度替わりの際に、進学等により多少の空きが出ることがありますが、ほぼ定員いっぱいで、生徒さんを増やすことがなかなかできない状況です。

 

従来の精神論に頼らない科学的な根拠に基づいた指導法をもっと広げ、本質的な意味で生徒さんの人生の質をあげることに貢献していきたいと考えています。

 

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